覚悟

夜、中庭に表れた私を見て真白が驚きの声を挙げた。
「処置済みだよ、心配しないで」
これは私のうっかり、というべきか。
私を特によく思わない人たちとグループを組んで実践含む鍛錬をすることになってしまい、意図的にかどうかがギリギリわからない範囲でかなり痛めつけられた。
――確実にわざと、ってことをしてこないあたり頭が良い……。
是非その頭を勉学へとむけてほしいものだ。
私のむき出しの腕には、無数の傷跡が月に照らされている。自分でもその痛々しさにびっくりしてしまう。
「真白?」
突然彼女が私を強く抱きしめた。
「……私、正直ういに嫉妬してたんだ」
真白は震えた声で語りだした。
同じ役だった私がバサラ持ちであったことを周りから色々言われたこと、成長できない自分と比べてしまったこと、隣で力を得ていく私を苦々しく見ていたこと……。
「でも、戦うって、こういうことなんだなって」
「ういみたいな優しい子に、ここまでさせるバサラの力……私……」
真白はぼろぼろと大粒の涙を流していた。
「ごめん。辛い、よな」
「うん」
私も涙がこみあげてきた。
「辛い。もう、やだ」
彼女が泣いたから、つられたから、と言い訳をしながら弱音を吐いた。
「頑張って、やってるのに、みんなバサラのお陰だって言って……」
「でも、確かにそうだし、何も言い返せない。私、弱いところが全然変わってないの」
聞くに堪えない言葉が、涙と一緒にぼろぼろとこぼれた。
涙は地面へとしみこんでいく。
「うい……」
彼女は自らも苦しそうな顔をして、それでも私を慰めてくれた。
「何かあったら、私を頼れよ。強くなる前に壊れたら意味ないだろ」
「それにこう言っちゃなんだけど、ああいう奴らとはすぐに離れることになる。自分より他人が気になってしょうがない、自分が出来ないのを何かの、誰かのせいにする……そんな奴は、基本的に上には立てない。名前なんてもらえるわけがない」
真白の言葉が優しく、胸にしみわたってゆく。
「いいか、あんたはあんな奴らとは格がちげぇんだ。何言われても、できるようになったことはお前の能力に変わりない」
「負けんなよ。ただ、いいなって上ばっかり見つめてるやつには絶対なるなよ」
彼女はもう涙の片鱗も見せない表情で、最後にこう言い残した。
「大事なのは、自分がどうしたいかだと思うぜ」

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