特別

「おい、ういって例のバサラ持ちだろ?」
「うわー、期待だね」
「全然強そうに見えないけど……」
と、露骨な声。聞こえていないふりをして、自らに与えられた席に座る。
日を重ねるごとに私は着実に力をつけ――最近、自分でもおかしいことを自覚してきた。
元の世界では特にこれといった訓練を受けていないのに、私はすぐにできるようになってしまう。特に身体面での成長が早い。
最初は周りとの年齢のせい、努力の違いだと考えていたのだが、それにしても尋常ではない早さであった。
私はすぐに同年代の子に追いつき、追い越し、すでに実践段階にまで来ている。
――これが、バサラのお陰なんだとしたら。
皆がやいやいと騒ぐのも無理はない。私が手に入れたものは物凄い力だったのだ。
私は自分の手の平を見た。鍛錬で傷ついて、心なしか固くなった皮膚。
――みんな、もっとボロボロなのに……。
傷の治りも明らかに早く、
私だけ綺麗。私だけ特別。それは諸刃の剣である。
戦は団体戦だ。戦場における協力の大切さを嫌というほど教わってきたし、きちんと頭で理解はしている。
けれど、どうしてもできる気がしない。この、どこか疎外感のある空気が消えない。
元の世界では人間関係で困ったことが無かったので、どう対応すればいいかわからずにここまで来てしまった。
「やっぱりバサラ持ちは上達が違うね」
「流石だね! 未来の頭領!」
今まで浴びせられた称賛の言葉は、私の持つ特別な能力、つまりバサラに向けられたものであって私の頑張りを認識してくれたわけじゃない。
実際に「努力もせずにできて良いなぁ」と言われたこともあった。
頑張っても頑張っても、それが全てバサラに吸収されてしまうような、そんな感覚であった。
――私がこんな卑屈になっているから、余計にうまくいかないのかもしれない。
――それはわかっているんだけど、けど……。
私は手の平を見つめ続けた。

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