特別

長く感じた個別訓練の期間が終わり、私は他の雑賀衆と混じって訓練を受けるようになった。一歩前進した気がする。
とはいっても、流石はレベルに応じて分けられているので結局――
「ういーーー!!!」
――結局、まだまだなところは変わりないんだよなぁ……。
私は今、小学生くらいの年の子たちと稽古している。
座学や実践やらとなんやかんや日中はずっと一緒にいるので、仲良くもなるのだがいかんせん体力というか、若さの違いを痛感する毎日である。
「うい、何読んでるのー?」
「んー、さっき教えてもらったところの復習の本」
一人大きい私がやはり珍しいのか、入った当初からやたらと話しかけてくれる。
ゆっくり本も読めないので困ってはいるのだが、この子たちの方が知識も経験も上だと思うと、邪険にする気にもなれない。
「ねー、ういったらー」
「痛い痛い! 髪の毛引っ張らないでってば!」
「遊ぼ」
「遊ばない、私は本を読むの」
「遊ぶの」
「……なにして遊ぶかによる」
結局折れてしまうのは、この子たちが先輩だからということにしておく。

「よーーーしお次どうぞ!」
提案されたのはちゃんばらと呼ぶのだろうか、木の枝でのたたき合いっこである。
遊びといわれるとどうしてもかくれんぼやら鬼ごっこやらを想像してしまいがちだが、流石は傭兵集団といったところか。それとも、村の子どもたちもこんな風なのだろうか。
この遊びにも、ここに来てから初めて出会って体験したのだが、何度も何度もやるうちにコツというか、相手の動きを見る方法がわかってきた。
最初は叩きのめされていたのだが、今ではこの通り、私は倒れた相手の子を見下ろしている。
――序盤に何回もふくらはぎ強打されたけど!
――どうしても視点の違いからの動きが読めない……反省反省。
「ずりーぞ! 背が高いから勝つんだろ!」
体格差を言ってしまうと確かにずるいかもしれないのだが、勝ったのには変わりない。
ちゃんと努力もしているし、自尊心のためにも否定しておく。
「背が低い方が足元狙いやすいでしょ。お互い様です」
「言ったな、かかれーーー!」
――かかれ!?
その掛け声とともに一斉に周りでみていた子が攻撃を仕掛けてくる。
「待って三人がかりは流石にルール違反でしょ!? いっ!」
本戦(?)で使っているものよりは細めの枝ではあるが、痛いものは痛い。
「バサラ持ちなんだからこれくらいで十分だろ!」
「理不尽過ぎない!?」
なんとかジャンプを駆使してよけるが、やはり3対1では勝ち目はなかった。

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