特別

しんと静まった中に、風を切る音。
足音をあえて忍ばせずに近づくと彼女が動きを止め、月光の中振り返った。
「うい」
真白は心なしか緊張した面持ちだった。
「約束……してた、よね。遅くなってごめん」
「忘れちまったのかと思ってたぜ」
なぎなたを振るう音がまた再開された。
――……私もやろう。
隣に立って、昼の訓練の続きをする。
「バサラ持ち、か……」
真白がつぶやいた。
「なんだか、すっげ―遠いところにういが行っちまった感じだ」
「バサラ持ちとか関係ない」
私は返事を返しながら、自分自身にも言い聞かせた。
「私は私だよ。どんなに変わったとしても、私であることには間違いない」
そう、私は私。元の世界でへらへら笑って遊んでいた私と今の私は全く違うようで、実のところ同じ存在。
今はもう、こちらの生活が刺激的過ぎて思い出すことも少なくなったけれど、あれは確かに私であったのだ。
そう考えると、怖い。だって、いくら頑張ってもあの頃の弱さが抜けない気がして。
「まだ普通の銃だって、ろくに触ったこともないしね」
バサラ持ちなんて言われて、舞い上がってる場合じゃない。努力しなければ。
常に、前を向いていなくては。
「これから色々教えてください、師匠」
そう冗談めかして言うと、真白はこっちを見て、前と同じ屈託のない笑顔で笑ってくれた。
「任せときな!」

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