特別

朝、起きた瞬間に自分がいつの間にか寝てしまっていたことに気づいた。
――うわ……かつてないほど筋肉痛が……。
起き上がろうとすると体の節々、いたるところが痛む。
やっとのことで立ち上がり、べたべたした体を洗い流しに向かう。
傷こそ軽い擦り傷だが、おそらく筋肉はずたずたであろう。
歩くたびに足が引きつるような感覚がして、顔をしかめる。
――私、こんなのでやっていけるのかな……。
汗と共に弱音も流してしまおうと、井戸へと足を進めた。

「もっと沈んで! もっと、もっと!」
「はい!」
バランスを崩して倒れて、腕にまた擦り傷が出来る。あとで洗っておかないと、と頭の端で考えながらも、体はすぐに立ち上がり鍛錬を続ける。
「じゃあ今日はこれでお終い」
少し経つと、どれくらいで自分が音を上げるのかがわかってくる。どれくらいの無理が出来るのかが、はっきりしてくる。
「は、あ……っ」
呼吸を整えて、縁側へ腰を下ろす。
この後用事があるから、と早めに鍛錬が終わったので今日はまだ疲労が少ない。
――まだ、動ける。
私は汗を洗い流したあと自室で横になって目を閉じ、体を休ませた。
――ようやく、約束を果たせる日が来たんだ。
陽が落ちて皆が寝静まり静かになったころ、私はそっと体を起こした。
腕を回してみる。どうにか耐えられそうだ。
――よし。
こっそり部屋を抜け出すと、私は中庭へと向かった。


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