覚醒

がぁんっっ、と空気が揺らぐ。
「こっちまで来てるみたいだな」
空気を切り裂く銃の音がまた立て続けに聞こえる。
私達はあの後、木から降りて近くに設営している雑賀の拠点にいた。
私と真白が確認のために音のする方を見ると、ほんの数十メートル先で戦闘が繰り広げられていた。
孫市と二人の雑賀が、大勢の敵に囲まれているところが見えた。
少数で危なげもなく戦い続ける雑賀を、誇らしく思った。
その時。
「〜〜!」
「〜〜、〜〜!!」
村人たちが、何かを孫市に向かって叫んだ。
するとほんの一瞬、戸惑ったように孫市の動きが止まった。
「孫市様……っ!?」
思わず声が漏れ、一歩前に進んだ。それは隣の真白も同じことだった。
そのすきに、村人が鍬で孫市を傷つけた。
肩から赤がしたたり落ちるのが見える。
孫市が肩を押さえ、よろめく。
――孫市様が危ない!
その間にも、村人は孫市の周りを取り囲んでいる。
血の気が引く。私は思わず、走った。
「うい!?」
呼び止められる声も無視して、一直線に走る、走る。
孫市まであと数メートルのところで私は止まる。
そして、地面に落ちていた銃を拾い、発砲する。
「ぐっ!?」
今にも孫市に切りつけようとしていた、鎌を持った男が倒れる。
私は銃を再び構え、照準を合わせ、撃つ。
「あいつも雑賀か!」
「やっちまえ!!」
私の前にいた男が襲い掛かってくる。
軽やかに後ろへ跳んで、回避。
私がさっきまでいた場所に振り下ろされた鎌を銃の身ではじき返し、撃つ。
銃弾はまっすぐに村人の額を撃ち抜く。
――次!
後ろから迫る敵の足を自らの足で払い、よろめいたところを銃の持ち手で殴りつける。
「ぐぼ……っ」
敵は倒れる。私は振り返り、三人の男の胸を狙う。
「あ……が……っ!?」
「があぁっっ……」
「ひっ、ぐああああぁぁぁっっああぁ」
手に衝撃が響くと同時に、男たちは地面に伏す。
再び前を向くと、目を見開いた孫市の顔が見えた。
「……え?」
――あれ? 私、今……?
撃った時の銃身の震えが、いまだ手に残っているような感覚があった。
――……私は。
くらりと世界が揺れる。
気が付くと、空が見える。
地につく頭に、鈍い振動が走る。
意識が闇へと沈んだ。

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