芽出

「それ何? 手紙?」
「ああ、手紙だ」
「そういうのの受け渡しも仕事なの?」
「雑用係だからな。ちょっと便所行ってくる」
「じゃあ先に準備始めとくね」
「おう」
彼女は男の手紙を持ったまま行ってしまった。
私は昼に出た洗いものを処理するために、作業に戻った。

真白とともに夕飯の準備をしていると、廊下に孫市が通っていった。
同じ屋敷に住んでいながらも意外と会う機会は少ない。
「あっ」
それを見た真白が小さく声をあげ、孫市のほうに走っていった。
「孫市様、ご報告があるのですが」
孫市は私をちらりと見た。
「ここで良い」
真白はちらりと私を見た。
――私?
不自然な視線に戸惑う。
「……はい。この手紙ですが」
だが、内容は私と全く関係のないことであった。
「疑いのある者に向けて送られたものです。内容のご確認をお願いします」
「箇所は」
「はっ、五行目から七行目にございます」
真白が巻かれた手紙を解き、孫市に見せる。
「情報としては、『三人増えた』『銃を新たに三百丁』です。進行予定等はありませんでした」
「いいだろう。このまま流せ」
「はっ」
孫市は一言を残して立ち去った。
「きちんと教えてやれ」
「承知しました!」
真白がこちらへ戻ってくる。
「手紙のお話?」
「ああ」
真白は再び野菜を切り始めた。
「何か私に関係あるの? 真白も孫市様も、こっち見てたみたいだけど」
「後で話してやるよ。今は手ぇ動かしな」
「う、うん」
真白の顔が少し怒っているか悲しんでいるように見えたため、私はあわてて火吹き竹をぷうっとふいた。
私たちは無言のままで作業を続けた。
熱い火がうなる様にその体を瞬かせていた。

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