※現パロ、恋人同士設定。 【きみとふたりで】 「ほら、終わっちゃうよ!」 カランコロンと下駄の音を鳴らしながら境内を走る。 日本に住んで数年が経つが未だにこの着物と下駄と言う服装には慣れないとスネイプは思った。 しかしアイナからお願い、と可愛く言われれば無下に断るわけにもいかず、こうしてまた近所の神社で行われる夏祭りに出向く。 二人で浴衣を着て境内を散策、そしてクライマックスの花火を高台のお社から見る。 毎年、なんとなくこの時期になると嬉しくなる自分もいた。 浴衣姿のアイナを見るのはこの時だけ。 黒髪を結い上げ浴衣に身を包む、普段見せないようなオリエンタルな雰囲気を醸し出すアイナがたまらなく好きだった。 「セブルス、ほら早く〜!」 今年の祭りは妙に盛況で人も多く境内は混雑していた。 やっとのことで人ごみを抜けて、お社へ続く階段を登りながらアイナが振り返る。 賑やかな声と大きな音がするところを見ると、どうやらすでに花火は始まっているようだった。 「間に合うかな?」 あと少しで、と言うところで辺りが騒がしくなり、一際ドンっと大きな音を立てて大輪の花が夜空を彩った。 お社に着いた時には夜空の花は散りかけだった。 「あぁ〜・・間に合わなかった」 見るからにシュンとしているアイナは可哀そうに見えたが、自分としては嬉しくもあった。 「また来年、来ればいいだろう」 そうだね、とアイナも嬉しそうに言うのを聞いてまた来年の楽しみができたことを二人でよろこんだ。 (来年も、再来年も) (あなたと一緒にいられますように) ------------------------------------------------------------------------------------ 【残暑お見舞い申し上げます】 蝉が今年最後の鳴き声を上げている。 季節は夏の後半。 しかしまだまだ残暑厳しく、毎日暑い日が続いている。 日本の夏休みは短い。 秋口になればすぐに学校が始まる。 その準備の為、すでに机に向かっているスネイプのすぐ後ろから声が聞こえた。 「セブルスぅ・・暑い・・・」 先ほどからずっと、アイナはこんな調子。 部屋は朝からエアコンが効いているのだが・・ 「暑いよぉ」 「そんなこと言われてもな」 スネイプももちろん涼しいわけではない。 同じくらい暑いのだ。 エアコンは効いているけれど 「そんなに暑いなら離れればいいだろう?」 机に向かうスネイプの背中にピッタリとくっつくアイナ。 エアコンの効いた部屋でもこんなに密着してればこれは暑い。 「やだ〜!でも暑い!!」 かれこれ小一時間、この調子。 あと少しで用事が終わるからと何度も言い聞かせているのに。 「僕も暑いんだから我慢しろ!」 思わず声を上げてしまったので、アイナが離れようとする。 少し隙間の空いた場所に冷たい空気が流れ込んで気持ちがいいが 「あと少しだから離れるな・・終わったらアイスでも食べよう」 表情こそ見えないが、アイナがまたスネイプの背中に顔を埋める。 先ほど流れこんだ冷気はもういない。 でも、 その熱がやはり恋しい。 20120906加筆修正 |