【Zephyranthes】 「父さま、このお花なあに?」 幼い娘がどこからか花を摘んできた。 その花はユリに似た姿で、白い花を咲かせている。 白い花は彼女の黒い髪のおかげでより一層、白さを増して見える。 「きれいだったから、父さまにも見せたくて・・・ごめんなさい・・」 自分の沈黙が花を摘んできたことで怒っていると勘違いしたのか少し不安そうに、小さな声でそう告げた。 「怒っているわけではない」 そう言いながらアイナの頭を撫でてやると安心したのかニッコリと笑った。 「この花はゼフィランサスと言う名だ」 「ゼフィランサス・・?」 「左様、花言葉は『清き愛情』だな」 きっとアイナに捧げている愛情のような感じだろう。 そう考えながら口元だけで笑い少し難しい顔で考えている娘の黒髪を再びそっと撫でた。 永遠に穢れることのない愛情を君に・・・ ------------------------------------------- 【Dendrobium】 デンドロビウムと言う花がある。 洋蘭の一種で太めの茎に白やピンクと言った鮮やかな花を咲かせる。 可憐さと上品さを併せ持つ花だ。 薄暗い地下牢の自室にはふさわしくない、とそんなことを言いつつもきちんと面倒を見ているスネイプ。 この花はソファに座っているアイナが友人に貰い受けたのだが世話の仕方がわからないとのことで、今はこのスネイプの部屋にあるのだ。 デンドロビウムの花言葉は・・・・と、スネイプは考えるのをやめソファに座る人物を見た。 先ほどから我輩の可愛い恋人はご機嫌斜めだ。 「・・紅茶は?」 「いらない!」 「・・お菓子は?」 「いらない!」 こんな問答をかれこれ数十分は繰り返している。 ふぅ・・とため息をつき、机を離れアイナの居るソファの隣に腰掛けた。 「・・紅茶もお菓子もいらないなんて・・・何をご所望ですかな?」 優しく耳元で囁けば、顔を真っ赤にしてスネイプの耳元に近づき言った。 「セブルスが欲しい・・・」 どうやら花の世話をしていたのが気に入らなかったらしい。 自分で持ち込んできたくせによく言う、とスネイプは心の中で思ったが口には出さなかった。 「では、お望みのままに・・」 ニヤリと口元だけで笑い、アイナの頭を撫でてやれば目を細めて喜ぶ。 先ほどの機嫌の悪さは何処へやら、だ。 そんなアイナを見て、本当にこの花を彼女に譲った奴はよくわかっているな、と感心し花とアイナを交互に見比べ、スネイプは笑みを漏らした。 デンドロビウム 花言葉は『わがままな美人』 20150815:加筆修正 |