入学をあと数日後に控えたスネイプ家。 ここ最近の話題はホグワーツに関することばかりだ。 リディナは隙あらばスネイプに教科書のわからない所を聞いたり、本を片手にに杖を振りながら基本呪文の練習をしている。 勉強熱心な娘を見るのは悪いことではないし、魔法薬学の覚えが殊更良いのは父親としては鼻が高いものだ。 しかし入学の日が近づくにつれ、不安になることもある。 彼女の組み分けについてだ。 おそらく、校長に頼み込めば細工など造作も無いことだろう。 正直に言ってしまえば、スリザリンに入れたい。 自分の寮において、目の届く範囲で護りたい。 そんな事考えてしまうなんて教師失格だと言われるだろうが、教師である前にリディナの父親なのだ。 しかし彼女の性格は自分とは全く逆なのだ。 狡猾な臆病者の自分とは違い優しく、正義感の強い・・・まるで彼女の母親、ルセットにそっくりだ。 そんな考えが最近スネイプの頭の中に常にあった。 ある夜、いつものように二人きりの食事をとっていた。 あらかた空になった食器が並ぶテーブルを見たあと、リディナがスネイプに尋ねた。 「父さま、私ってどの寮になるのかしらね?」 楽しそうに笑う彼女を見ると、少し心が痛んだ。 「父さまはスリザリンだったのよね?」 「あぁそうだ」 「私もスリザリンかな?」 そうだな、と言いたかった。 きっとリディナはそうしなさいと言えば、スリザリンに入るだろう。 しかしそれは自分のエゴでしかない。 いくら可愛いからと言って、彼女の未来を狭めたくはない。 それにリディナもそれを望まないだろう。 「・・・ルセットはグリフィンドールだった。 リディナは優しくて強いところがよく似ている。」 おいで、とリビングにリディナを連れて行きソファーに腰掛けるように言うと、スネイプは壁一面にある本棚から一冊の古びた本をとりだしリディナに手渡した。 「父さま、これは?」 開くように促されたリディナが表紙を捲る。 それは本ではなくアルバムだった。 母親の話はたくさん聞いた。 しかし、不思議なことに今まで写真は見たことがなかったのだ。 「ルセット・・・お前の母さんだよ」 現れた写真に写る女性は優しく微笑んでいた。 スネイプを見れば、その写真を愛おしそうな目で見つめていた。 そして、噛みしめるように口を開いた。 「正義感が強く、心優しい女性だった・・ 本当に・・・リディナはそう言ったところがそっくりだ」 興味深げにアルバムを見るリディナの頭を優しく撫でるスネイプの表情は慈しみ溢れていた。 「リディナ、どの寮に入るかはお前が決めなさい。 結果がどうあれ、絶対に後悔はしてはいけない・・わかったか?」 はい、と頷くリディナの頭をもう一度撫でると二人はアルバムに視線を戻した。 「ねぇ父さま、母さまのおはなしをして?」 その夜、スネイプ家から灯りが消えたのは空が白んできた頃だった・・・。 (・・・・・うっかり朝になってしまった・・) (それで?ねぇ父さまそれからどうなったの?) (寝る気配、全然なしか・・・) |