「リディナ、我輩は少し行くところがある。 採寸には時間がかかるだろうから暫くしたら迎えにくる」 そう告げられたらリディナはひとり、洋品店の試着室にいる。 希望通り少し大きめに制服を誂え少し空いた時間、店内に設置してある椅子に座っていた。 店内では、魔法をかけられたらメジャーはハサミ、針たちが忙しなく動いている。 魔法界では日常の光景なので、今更リディナは驚きはしない。 「本当に魔法なのね」 ふと聞こえてきた声にリディナは隣を見た。 いつから居たのか、隣には栗色のウェーブがかった長い髪の女の子が座っていた。 「あなた、マグルなの?」 さっき驚いていたのを思い出し、リディナは女の子に声をかける。 「えぇそうよ。あなたは?」 「私は父さまが魔法使い。・・母さまもそうだったわ」 「・・・そうだった?」 「母さまは私を産んですぐに亡くなってしまったの」 少し寂しそうにリディナが言うと、女の子はごめんなさい。と小さな声で謝った。 「気にしないで…えっと…」 「ハーマイオニー、ハーマイオニー・グレンジャーよ」 よろしく、と手を差し出されたのでそのまま握り返す。 「私はリディナ・スネ・・」 リディナの自己紹介の途中で店の外からハーマイオニーを呼ぶ声が聞こえた。 「リディナって今年入学なの?」 「そうよ!ハーマイオニーも?」 「えぇそうなの。学校で会えるといいわね」 再会の約束をするとハーマイオニーは両親と共に店を後にしてた。 またひとりで迎えを待つ事になったリディナだったが、数分もしないうちにスネイプがやってきた。 「すまない、遅くなったか?」 「大丈夫よ、父さま」 店を後にした2人はまたダイアゴン横町の人混みに紛れていった。 「そういえばね父さま、今日私お友達ができたの!」 夕食の席でスネイプと向かい合わせに座ったリディナは今日の出来事を嬉しそうに報告していた。 「そうか・・よかったな」 可愛い娘の報告に父親の顔で、優しく微笑むスネイプ。 しかし、何か思い出したようにリディナに尋ねた。 「その子にスネイプ姓を名乗ったのか?」 「いいえそれが、ちょうどハーマイオニーの両親が来てしまい・・」 それだけ確認した後、スネイプはリディナの名を呼んだ。 先程の和やかな雰囲気とは違い、何やら神妙な話をする前触れだと悟ったリディナは「はい」と短い返事をし、スネイプに向き直った。 「入学に当たり、1つ約束を設けたい」 「約束・・・?」 リディナは首を傾げた。 「ホグワーツでスネイプ姓を名乗ってはいけない、これを守れるな?」 「何故ですか?」 疑問を素直に口にしてみれば、スネイプは先程の様に父親の顔で優しく微笑んだ。 「我輩の娘という事で贔屓をしたくはないし、色々と面倒ごとに巻き込みたくはない。 わかってくれるな?」 優しく諭す様に言われればリディナの口からはyes意外の返事は出来ない。 きっと父さまなりになにか考えがあるに違いないとリディナは納得した。 (今日から私はリディナ・プリンスね!) (・・・いや、ホグワーツに行ってからでいいんだが) |