「我輩にもこんな日が来ようとは…」 ホグワーツ魔法魔術学校。 言わずと知れた魔法界での名門学校。 そこで魔法薬学の教鞭をとる男、セブルス・スネイプはフッとため息にも似た息を吐き出し 明るくなり始めた空を窓越しに見ながら、手元の封筒を見つめた。 《リディナ・スネイプ殿》 封蝋を施した手紙。 差出人など見なくても、それがどこから送られて来たものかはわかる。 ましてや、よく見知った校章入りなら開かなくとも内容など手に取るようだ。 秋の入りをあと幾日と控えた今日、この手紙が届いたと言うことは… 「父さま・・・?」 いつからいたのか黒く腰までの長い髪を垂らし、白いネグリジェの少女が眠そうな目を擦りながら、声をかけた。 「リディナ、起きたのか?」 リディナと呼ばれた少女。スネイプの娘である。 おいで、と手招きしてやると少女は嬉しそうに側までやってきた。 優しく頭を撫で髪を梳いてやればリディナは嬉しそうに目を細める。 「さっきフクロウ便が着たでしょ?物音がしたから目が覚めてしまったの…」 目が覚めた、と言う割にまだ少し眠そうに瞬きをする。 そんな様子を微笑ましく見ながらスネイプは手の中の手紙をリディナに手渡した。 「リディナ、お前に宛てた手紙だ」 「私…に?」 キョトンとした表情のリディナだが、やがて手紙を受取り差出人を確認すると先程の眠気は何処へやら、ぱぁっと顔を綻ばせた。 「父さま!これっ!!」 「あぁ…入学おめでとうリディナ」 頭を撫でながら言ってやれば、リディナは再び弾けんばかりの笑顔を見せた。 笑顔で手紙を読みふけるリディナを見て、窓越しに空を見れば朝日が登り始めるところだ。 きっと今日も晴れるだろう。 そして手紙を読むリディナの様子からすると… 頭の中で今日の予定を立てながら、スネイプはまたフッと息を吐いた。 「…我輩にもこんな日が来ようとはな、ルセット」 それは誰に聞こえるでもなく澄み切った朝の空気に消えていった。 (リディナ、そろそろ朝食にするぞ) (・・・・・・・・・はーい(生返事)) (・・・・リディナッ!) |