おはなし | ナノ







マグルの街へ行ってからリディナは心なしか元気がなかった。
正確に言うとある店の前を過ぎてから、か。


リディナは幼い頃から何かを強請るような子ではなかったのできっと今回も欲しいものがあるが、言い出せないのは分かっていた。

「なにか欲しいものでもありましたかな?」

助け舟のつもりでリディナに声をかけた。
欲しいもののひとつやふたつ、年頃の子なら父親に強請ればいい。
正直、そっちの方が自分としても嬉しくはあった。

しかしリディナからは「大丈夫・・」と力ない言葉が返ってきた。


やはり、か。


それ以上、聞くこともせずに散策と食事を済ませホグワーツへと戻った。





「このリボンをいただこう」

リディナがグリフィンドール寮に帰るのを見届けたのち、スネイプは再びマグルの街に来ていた。
そしてわき目も振らずにあのリディナがショーウィンドウに見入っていた店へと入る。

店内はやはりクリスマスに彩られていた。

「いらっしゃいませ」

女性の店員が声をかけた。
スネイプがすぐさま店員に展示されていたリボンを示し購入の意思を告げた。


会計を済ませ商品を待ってる間、店員が「サービスです」とメッセージカードを渡してきた。
書いてくれれば一緒にラッピングしてくれるともことだったのでペンを借りメッセージを認めた。


ホグワーツへ戻りフクロウにプレゼントを託しスネイプは私室へ戻った。
アレを見た後のリディナの反応が楽しみだ、と思いながら湯気を立てている紅茶をすすった。





翌日、朝一番にリディナはスネイプの部屋へと文字通り飛び込んできた。
興奮した面持ちで、感謝の意思を伝えようとしているのがスネイプには嬉しかった。

「その顔が見たかったのだよ、リディナ。メリークリスマス」

リディナもそれを聞いて笑顔でスネイプに言った。

「メリークリスマス、父さま!」

パジャマ姿のままだったリディナを風邪をひかぬうちに寮に戻るように促した。
本当は紅茶でも入れてやって話をしたかったがさすがにあの格好のまま長いさせるわけにはいかなかった。




その日は何事もなく幸せなまま過ぎるはずだった。
いつものように大広間で食事をした。
クリスマス当日と言うことで生徒の人数は少ないものの、いつもより豪華な食事だった。





日が傾いてきたころ、スネイプは人気のない廊下を一人歩いていた。

「す・・スネイプ教授・・・」

その声は急に背後から聞こえてきた。
独特のどもりに聞きなれた声、振り向くと案の定クィレルがそこにはいた。

「これはこれは、何か用ですかな?」

声こそはどもっていたが、視線には邪悪な何かが含まれているような気がした。
スネイプは今回の事件の原因をクィレルと確信している為、常日頃から監視をしている。
クィレルもそのことを知ってか、自ら話しかけてくるようなことはしてはいなかった。
しかしこのタイミングで何故、とスネイプが思考しているとクィレルが近づき小さな声でスネイプに告げた。


「リディナ・プリンスは・・・娘ですね?」
「・・・・・!!」


予想外の質問にスネイプは声が出なかった。
しかし、その反応こそが質問を肯定したと同じ意味になってしまった事に気が付いた時には、もう遅かった。


クィレルは普段では決して見せないような邪悪な笑みを浮かべていた。

「あの御方が言っていた事は本当でしたか・・・・」
「リディナに何をする気だ!!」

スネイプも怒気を含んだ声で言った。


「まだ・・まだ何もしません・・ただ・・・・・」

「あの御方次第、と言うことでしょう」

クィレルはいつになく饒舌に言葉を紡ぐ。
スネイプにはその時間がとても長いように感じた。


「では・・・・す、スネイプ教授、し、失礼します」

いつものようにどもりながら言ってクィレルは姿を消した。





どうやって自室に帰ってきたのわからないくらい疲弊していた。
スネイプは部屋に着くなりベッドに倒れこんだ。


リディナとの関係をクィレルに知られた。
つまり、もう例のあの人には知られてしまったと言うことだ。

先ほどのクィレルの眼、あれは例のあの人眼だった。
なにもしないと言っていたのを鵜呑みにできるのか、スネイプは思考を働かせようとしたが、それよりも心に芽生えた恐怖が勝ってしまった。

「リディナ・・・・・」


力ないスネイプの言葉が薄暗く、寒い地下牢に響いた。











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