おはなし | ナノ







鏡の部屋の一件は後から聞いた話ではリディナがいなくなったということになっていたらしく
その後マクゴナガルから叱られ、夜間外出で1点減点、そして何故か他寮のスネイプから罰則を言い渡されたリディナだった。


次の日、明るい時間にスネイプのいつもの罰則でたっぷりと話をしたリディナが部屋へと戻った。

「おかえりなさい、リディナ」

グリフィンドールの自室へ帰るとハーマイオニーが荷造りを終えたところだった。
不思議に思いカレンダーを見ると明日からクリスマスの休暇になることにリディナは気が付いた。

「ハーマイオニー帰るの?」
「えぇ、パパとママが帰ってこいって」

言葉とは裏腹にハーマイーニーは嬉しそうな顔をしていた。
この時期はクリスマス休暇で一時帰宅が認められている。
ほぼ毎日父親であるスネイプと接しているリディナにとっては家にいても帰っても同じなのでどちらでもよかった。
しかしほかの子は違う。
事情があり帰宅しない子以外はほぼすべての生徒が帰宅する。

「クリスマスプレゼント送るわね」
「じゃあ私も!」

約束よ、とハーマイオニーとくすくすと笑いながら言った。

ハリーとロンが大広間にいるというのでリディナも行くことにした。
廊下を歩いていると突然背中から声をかけられた。

「リディナ!」

声の方に振り向くとトランクを引いたドラコがいた。

「残るのか?」
「うん、ドラコは帰るんだね」

ニコっと笑って返事をしたらドラコが意外そうな顔をした。

「何かあったのか?」
「え?」
「最近元気なさそうだったのに・・今は大丈夫そうだから」

ドラコは言ってから顔を背けたが、少し耳が赤く染まってるのが見えた。
それを見てリディナもドラコの言っていた意味に気がつき頬を赤くした。

「勘違いするなよ、僕はちょっと気になってただけで・・」
「ありがとうドラコ。クリスマスプレゼント送るからね」

またニコッと笑って言うと、じゃあ時間だからとドラコは足早にその場を後にした。
そして少し進んでから振り返り、僕もプレゼント送るからとリディナに言った。



大広間に着くと学校に残る生徒の疎らな人影があった。
グリフィンドールの机ではハリーとロンがチェスに興じていた。

「どっちが優勢なの?」
「やあ、リディナも残るんだ」

ロンがチェスの駒を一つ進めながら言った。
すると置かれた駒が動き出しハリーの駒を破壊した。
あぁ〜っと落胆の声がハリーから漏れた。

「ロンが優勢だよ、僕負けそう・・」

ハリーがチェス盤を見て次の手に頭を捻っていた。
リディナも盤面を見るが、チェスのルールをいまいち理解出来てないので解らなかった。
ただロンとハリーの表情を見ればロンが優勢なのは解った。

「そういえば、罰則は終わったの?」

ハリーが駒を一つ動かしながら聞いた。
するとすぐさまロンが自分の駒を動かす。
ガシャンと言う物が壊れる音がチェス盤から聞こえた。

「終わったよ、さっき」
「毎度スネイプが罰則なんてリディナはついてないね、僕だったら可笑しくなりそう」

と言いながらロンが苦々しい顔をした。
リディナもクスクスと笑った。

「今回は私が悪いし、仕方ないかな?」

「チェック!」

ハリーがリディナと話している間にチェスの決着は着いたようだった。




二人と別れ、ホグワーツ内を散策することにした。
中庭はすっかり雪景色となっており、ローブを着ていても少し寒いくらいだった。

「真っ白・・・」

リディナの呟きも吸い込まれてしまうような気がするくらい中庭は人がいなくて静かだった。

「こんな所に居ると風邪をひくぞ?」

後ろから声をかけられた。
誰にも思い当たらない声だったので驚いて振り向くと、そこには髭をたっぷりと蓄えたダンブルドアが立っていた。

「校長・・先生・・・」

ダンブルドアを見たことは何度もあるが、直接言葉を交わす機会は初めてなのでリディナは何を話して良いのか困り、言葉に詰まった。

「風邪を引いたらまたセブルスが心配するのぅ」

ダンブルドアは言いながら、笑っていた。

「セブルスの困った顔が見られるのは楽しいが、風邪を引かせたと怒られたらかなわんな。
さぁ中へ行こうかのMs.プリンス?」

肩を優しく叩かれダンブルドアに続いてリディナも中庭を後にした。
先頭がダンブルドア、後ろにリディナと言った順番で廊下を歩く。
二人分の足音が響く中、ダンブルドアが口を開いた。

「悩みは解決したようじゃの?」
「え・・・?」
「晴れやかな顔をしている・・ルセットによく似ておるの」

一度も振り向かずにダンブルドアは言った。
リディナは驚いて言葉が出なかったが、短く「はい」とだけ返事をした。

「難しいじゃろうが、信じれば必ず出来よう。
しかしセブルスをあまり心配させすぎるでないぞ」

すべて知ってる物言いにリディナは再び短く、しかし力強く返事をした。



「おや、噂をすれば・・・」

廊下に響く三人目の足音。
この音は聞き覚えがあった。

「校長・・・っとリディナが何故?!」
「年寄りの世間話をしておってのぅ・・そう言えばセブルス、休暇の件じゃが」

ダンブルドアは思い出したかのようにスネイプに言った。

リディナはスネイプが休暇をとるつもりだなんて知らなかったので驚いた。

「父さま休暇ってなんですか?」

スネイプがホグワーツにいる間、休暇を希望した事が無かったのでリディナは思わず聞き返した。

「セブルスが休暇を希望するなんて儂も驚いたぞ。精々楽しんで来るのじゃぞ?」

ニコニコとしたダンブルドアが「儂からのクリスマスプレゼントじゃ」と言いながら、スネイプとリディナを残し姿を消した。
後に残った二人には少し気まずそうな空気が流れている。

「父さま、休暇って?」
「いや・・その・・・・」

スネイプはなぜだか気まずそうにリディナから視線を外そうとする。
しかしリディナも引き下がらず、執拗にスネイプに尋ねた。

「・・・リディナとクリスマスを過ごそうと思って・・休暇をだしたのだ・・・」

観念したスネイプが小さな声で話し始めた。
照れているのかリディナと視線を合わせようとはしない。

「本当・・?父さまと、一緒にいられるの?」

感激のあまり目をキラキラと見開きスネイプを見るリディナの期待に満ちた視線を受けながらスネイプが小さくため息を吐いた。

「本当はサプライズにするつもりだったのだが・・あの狸爺め・・」

辛辣な物言いにチッという舌打ちはこの際聞かなかったことにしておこうと、リディナは心の中で思った。
何よりも今はスネイプを一緒に居られるという事が嬉しいから。


「父さま、素敵なプレゼントありがとう!」



(少し早いが・・メリークリスマス、リディナ)






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