おはなし | ナノ







「・・・父さま本当に大丈夫なの?」



早朝の医務室からリディナの声が聞こえた。

昨夜のトロール騒ぎの最中、三頭犬により怪我を負ったスネイプをマダム・ポンフリーに預けて来たが、
やはりどうしても具合が気になり朝方こっそり寮を抜け出してきた。

そこでベッドから立ち上がろうとしていたスネイプを見つけたのだ。

怪我は完治してなくマダム・ポンフリーもまだ退院には早いと言っている。
しかしスネイプは大丈夫だの一点張りで呆れたマダムが好きにしなさい、と仕方無く退院を許可したのだった。



そしてリディナにまた肩を借りながら地下牢の私室までたどり着いたスネイプにリディナが冒頭の声をかけた。

「いつまでも寝ているわけにはいかんだろう」
「でも・・・」
「とにかく、心配は要らない早く寮へ戻りなさいリディナ」

リディナに心配を掛けたくないのかスネイプは大丈夫と何度も言い聞かせる。
治ってないのは引きずって歩いているのでわかるが、リディナは大人しく引き下がるしかなかった。

「それと・・暫くは我輩の部屋に来るな」

扉を開けようとしたとき、スネイプが思いもよらぬことをリディナに言った。
どうして、とリディナが小さく聞き返すとばつが悪そうにスネイプが言った。

「ポッターに怪我を見られた。奴は我輩を疑っている・・
だから我輩と関わるとリディナまで疑われてしまうからな」

確かにあの時、寮へ帰ろうとしていたハリーと目があった。
そしてハリーは怪訝な表情をしていた。
しかし、疑われるとはなんなのかリディナには全く理解ができなかった。

「わかったならもう行け」

少し冷たい口調でスネイプが言うと、リディナは力なく扉を開け地下牢を後にした。






ハリーのクディッチデビュー戦が目前に迫っていた。
あの日以来スネイプの言うことを守り、接触は極力控えていた。
罰則と言う名目で会うこともなくなった分、ハリーやハーマイオニー、ロンたちと過ごすことが増えた。
三人は目に前に迫ったクディッチに夢中のようであの日のことをリディナに聞いてこようとはしなかった。
そのことがせめてもの救いか、リディナもスネイプのことを考えないようにすることができた。


試合当日の朝、グリフィンドールの相手がスリザリンと言うこともあり試合開始前から学校中で盛り上がっていた。

「なにか食べたほうがいいよ?」
「そうよ、トーストだけでも食べた方がいいわ」

朝食を取ろうと大広間へやってくるとそこにはすでに三人の姿があった。
ハリーが緊張で食事をとらないのを二人が諌めているところだった。

遠巻きに様子を見ていると三人の元へスネイプが近づいた。

二言、三言何かを話し、まだ痛むのか足を引きずりながら去って行った。
ハリーたちは立ち去るスネイプを見つめながら何か話しているようだった。

「ハリー調子はどう?」

平静を装いながらリディナは三人に話しかけた。
ハリーの調子や今日の試合のことを話しながらも、先ほどなぜスネイプがやってきたかを聞きたかった。
しかし時間が迫ってきたため、ハリーは選手控室に、残りは観客席へと移動した。




会場は校内と比べ物にならないくらいの熱気に包まれていた。
それぞれの寮のカラーに彩られ応援席からはまだ始まってもいないのに歓声が聞こえる。
ハーマイオニーとロンと三人でグリフィンドール側の観客席へ陣取る。
持参した双眼鏡を首から下げ、試にと覗くとちょうど目の前に教員席が見えた。

「(あ、父さま!)」

双眼鏡越しに見るスネイプに少し心が弾んだがスネイプの言っていた、疑われているというのがやはり気になった。
スネイプの隣にはクィレルが座っていた。

わぁぁと歓声が一際大きくなり選手に続き審判を務めるフーチが入場してきた。
歓声でほとんど何も聞こえはしないが、審判の笛が高らかに響き渡ると箒に跨った選手が一斉に空へと飛び立った。

ウィーズリーの双子の友達であるリーが実況を務めている。
グリフィンドールが優勢のようだ。
不思議なものでいざ試合が始まればそれに見入ってしま、不安や心配事もどこへやらだ。

リディナも思いっきり叫んでハリーを応援する。
グリフィンドールに得点が入ればハーマイオニーと抱き合って喜び、スリザリンが邪魔をして来ればロンと一緒になって怒ったりした。
先ほどまでの心配が嘘のようで、本当はハリーらとスネイプの間には何もなかったのではないかとまで思った。

ハリーは上空高くでスニッチが現れるのを待っていた。
見下ろすとグリフィンドールとスリザリンで激しく小競り合いを起こしている。
大変そうだ、とハリーが心の中で思っていると突然、耳のあたりを金色の何かが掠めた。
続いて実況席から「スニッチが!」と聞こえてくる。
ハリーはリーの言葉を最後まで聞く前に、スニッチめがけて急降下していく。
スリザリンのシーカーもスニッチに気が付いたらしくハリーを追うように箒のスピードを上げた。

しかしハリーの箒に異変が起こった。

まるで振り落すかのように大きく揺れ始めついにハリーは辛うじて箒に掴まっている状態になってしまった。
双眼鏡から除くリディナも恐怖で叫び声をあげてしまった。
しかしそんな中で一人だけ別の場所をハーマイオニーは見ていた。

「スネイプよ!呪いをかけているんだわ!」
「そんなっ・・・!」

ハーマイオニーの声で双眼鏡の先をハリーから正面の教員席へ移す。
すぐにスネイプを見つけると確かにハリーの方向を凝視し、何かを呟いているように口を動かしている。
しかしリディナはスネイプよりも隣に座っている人物に目が行ってしまった。

「(クィレル・・教授・・・?)」

普段からは想像もできないような悍ましい顔をし、まるで敵でも見るような顔でハリーのいる方向をみていた。
リディナは直感的にハリーの箒の異変はクィレルが原因だと感じた。
そのことをハーマイオニーに伝えようとするもすでにその場にはいなかった。

仕方なく教員席の様子を見ていると突然スネイプのローブから火の手が上がった。
炎がローブを少し焼き始めた時、周囲が急に騒がしくなり事件に気が付いたようだ。
慌てて火を消そうとして立ち上がると隣にぶつかりクィレルは前へと倒れこんだ。

「ハリーの箒が・・!」

ロンが大きな声でそう言ったので双眼鏡を移すと、ハリーは無事に箒に乗り直しスニッチを追った。
復活したハリーは上空から急降下し、地面擦れすれに飛んだ。
そして地面に転がり込むように着地すると、手を口まで持っていき何かを吐き出す様な仕草をして口の中から金色に輝くスニッチを吐き出した。

「グリフィンドールの勝利です!!!!!」

会場内に実況の声が響きグリフィンドールの応援席からは歓喜の声が、スリザリンの席からはブーイングが起こった。
しかしそんな声もリディナには遠くに聞こえる様だった。
先ほどのローブの件、クィレルの件とスネイプに聞きたいことがいっぱいだった。
観客席から降りていく二人を横目にリディナは一路教員席へと急いだ。


「父さま!」

教員席へ辿りつくがそこにすでにスネイプの姿はなかった。
仕方なく、先に校内に戻り地下牢教室の前でスネイプを待った。

「リディナ・・・?!」

祝勝会に参加しているものと思っていたリディナがここにいたことに驚き一瞬表情を変えたがすぐに入りなさい、と部屋へと促した。

スネイプの私室に入るなりリディナはさっそく本題を切り出した。
一部始終リディナが見ていたことを聞き、さらにクィレルが呪いをかけていたようだったと言われた時、スネイプは大きなため息をついた。

「父さま、本当のことを私にも教えて!」

リディナの懇願にこれ以上隠し通すのは無理だろう、とスネイプも考えたのかソファへ座るように促すと今までの事を話し始めた。





(あぁ・・・信じられない!)






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -