季節は残暑を過ぎ、すっかり秋めいてきた。 時より風が冬を感じさせる。 ホグワーツは近づくハロウィン準備で忙しい。 リディナは今日も地下牢教室に隣接したスネイプの私室に来ていた。 「それでね、父さま私やっぱり箒は苦手みたいなんです・・」 リディナが今日あったことをスネイプに話せば、レポートの採点をしつつも相槌を打ちながら、時には笑顔を浮かべたりしながら聞いていた。 「・・・ん?そろそろ時間のようだな」 会話が途切れたところでスネイプが時計を見ると既に針は予定していた時間を過ぎていた。 「もう・・ですか?残念です。罰則が終わりなんて」 そう、リディナがここに居る名目は罰則と言うことになっている。 リディナとスネイプが親子だと言うことはダンブルドアを始めとするごく一部にしか知られていない。 生徒には一切秘密にしてある為、リディナは事あるごとにスネイプに罰則を言い渡され呼び出しを受けている可哀想な生徒と言うことになっている。 「じゃあ、父さま・・・じゃなかった・・スネイプ教授、おやすみなさい」 「あぁ・・リディナおやすみ」 帰り支度を済ませ、地下牢教室を出る。 夜も深くなりつつある時間帯、ホグワーツの中は暗く、今手元にある灯りが無ければ前も見えないくらいだった。 「み・・・Ms.プリンス・・」 突然に後からかけられた声。 リディナが驚いて振り返るとそこには灯りもつけない暗闇に紛れたクィレルがいた。 「こ・・こんな夜更けに・・・ど、どうしました?」 何時ものどもった口調だが、その声に一瞬冷たい汗が流れた。 「スネイプ教授の罰則の帰りです・・・クィレル教授」 夜間外出の許可証はスネイプから受け取っていたので、その羊皮紙をクィレルに手渡す。 クィレルは杖を取り出し、ルーモスを唱え灯りを出すとその羊皮紙に目を通した。 「た、確かに・・その・・よ、ようですね。き、気をつけて帰りな、なさい・・・」 羊皮紙をリディナに返しながらクィレルはそう告げた。 「ありがとうございます。おやすみなさい、クィレル教授」 リディナがお礼を言って立ち去ろうとした時、クィレルの目つきが一瞬鋭くなり、どもりも消えた。 「しかし・・・飛行術以外は成績優秀のあなたが・・・罰則ですか?」 「・・・え?」 ほんの一瞬だったので、リディナには雰囲気の違いに気がつく余裕が無かった。 「で、ではおやすみ・・み、Ms.プリンス」 気がつくとクィレルは再び灯りを消しており、リディナに挨拶をすると再びその姿を闇の中に紛れこませた。 「あ、リディナ」 「おかえり!」 「お帰りなさい、リディナ」 グリフィンドールの談話室に入るとそこにはハリー、ロン、ハーマイオニーがまだ起きていた。 「あれ?みんなまだ起きてたの?」 リディナ不思議そうに尋ねると三人は興奮した様子で今日見たことを話し始めた。 「実はね・・・」 ロンが話してくれたことには、今日三人は禁じられたら廊下へ足を踏み入れてしまったらしい。 そこで見てしまったのだ、頭が三つある大きな犬を。 確かにロンの話は迫真だが、リディナは俄には信じられなかった。 頭が三つもある犬なんてお目にかかったこともないし、なぜここにそんな生き物がいるのかがわからなかっからだ。 「三頭犬・・・」 俄かには信じられないリディナには構うことなく、三人は犬のことやその足元にあったという扉のことを話し続けた。 (明日、父さまに聞いてみよう・・) |