おはなし | ナノ







楽しいと時間はあっという間に過ぎてしまうというのは本当だと思う。
入学し、組分けが終わってから数日は慌ただしく過ぎ去った。

嬉しいことにハーマイオニーとは寮の部屋が同じになった。
同室の子ともすっかり打ち解けて、組分けで悩んでいたのが嘘のようだった。


明日からいよいよ授業になるので、時間割の確認をすると魔法薬学の文字を見つけた。

「(父さまの授業・・・!)」

スネイプが学校の様子を話してくれる機会は少なかったので、リディナにとっては魔法薬学は楽しみな授業の一つだった。




「リディナ!」

変身術の授業が終わり、地下牢教室へ向かう途中リディナは後ろから声をかけられた。

いきなりの事に驚いて持っていた教科書を盛大にバラまいた。

「大丈夫か?・・・いや、すまなかった」

どうやら声をかけて来たのはドラコだったようで、リディナの落とした教科書を申し訳無さそうに見ながら言った。

「ドラコ・・・あ、大丈夫だから・・」

しゃがんで教科書を拾おうとするドラコを制しながらリディナも廊下にしゃがんだ。


「・・・ごめんねドラコ」
「え?」

拾いながらリディナはここ数日に考えていた事をドラコに切り出した。

「・・・スリザリンじゃなくて」

待ってると、ドラコは言ってくれた。
しかし実際の組分け結果はリディナはスリザリンではなくグリフィンドールだった。
ここ数日リディナはその事が心に引っかかっていた。


「本当だよ、期待してたのに。
ただ・・リディナが決めたんだから僕はそれでいいと思う。

寮は違うけど困った事があったら僕に言えよ・・」

ドラコの言葉を聞くと、心の引っかかりが溶けていくような気がした。
リディナは嬉しさに顔を綻ばせありがとう、とドラコに言うと

「礼なんて・・・リディナと僕の仲だろ」

とドラコは照れくさそうに言った








二人が急いで地下牢教室に入ると、既に殆どの席は埋まっていた。

グリフィンドールとスリザリンの合同授業だったのでリディナとドラコはそれぞれの寮の席へ座った。

地下牢教室は薄暗く、棚には怪しげな瓶が沢山置かれている。

リディナからしたら見慣れた光景だが、初めてこの部屋に入った生徒の殆どが部屋を見回し、不気味な光景に顔を引きつらせた。


程なくして授業開始のチャイムが鳴ると共に、教室後方の扉が派手な音を立てて開くと、スネイプが捲くし立てながら教室へ入ってきた。

後方に座っていたリディナも飛び跳ねるくらい驚いたが、初めて見る教師の顔の父親に少し誇らしさを感じた。



しかし授業が始まってみればそれは酷いものだった。

「こんな事もわからんのかね?・・グリフィンドール5点減点」

ハリーに対する威圧的な態度に意地悪な質問。
おまけに質問の答えが解って挙手していたハーマイオニーは無視だ。

「す・・スネイプ教授っ!」

リディナが思わずスネイプの名前を呼ぶと

「Ms.プリンス・・我輩はまだ発言の許可はしていないが・・?」

なんて睨まれた。


結局今日はおでき治療薬を作る事となり、怒濤のうちに授業が終わると生徒は一目散に逃げるように教室を後にする。




「スネイプ教授・・よろしいですか?」

人も疎らになった頃、やっとリディナはスネイプに話しかけた。

「話があるなら部屋へ来たまえ・・・」

そう言うとスネイプは教室に隣接している私室へリディナを呼んだ。






教室に隣接した私室も薄暗かった。

「・・・父さま!?」

部屋へ入るなりスネイプはリディナを抱きしめた。
そしてリディナの頭を撫でながら消え入りそうな声で言った。

「・・・・我輩を・・軽蔑するか?」

きっと先程の授業風景の事を言っているんだろう。
聞いてきたスネイプの表情は解らなかったが、声に不安が滲んでいた。

初めはリディナも驚いた。

しかし、いざ調合に入ると丁寧に薬の作り方を教え、ネビルの失敗した薬から生徒を守ったりしていた。
なんだかんだ言ってもリディナが知っているいつもの優しいスネイプがそこには居た。

「父さまは・・やっぱり私の自慢の父さまだったわ!」

リディナが素直にそう言うとスネイプは安心したのかまた二、三度リディナの頭を撫でた。




「父さまが学校の話をしてくれなかったのはこれが理由なの?」

あの後、スネイプがリディナにソファへ座るように促すとテーブルに紅茶とお菓子を用意した。

紅茶を飲みながらリディナがスネイプに訊ねるとバツが悪そうにフンと返事が帰ってきた。

「・・でも、みんな父さまの悪口ばっかり言ってるの・・私聞きたくない・・」

リディナが少し寂しそうに言った。
実際、スネイプの評判は良くない。
聞いていてそんな事はない!と訴えたくなる。

しかし当の本人は気にかける様子もなく言った。

「我輩はリディナが解ってくれていればいい・・」

スネイプの飄々とした言い方にリディナはくすっと笑った。



地下牢教室に隣接したスネイプの私室は薄暗かった。
しかし中からは楽しそうな二人の声が響いていた。








(リディナ、大丈夫だった?)
(スネイプに何もされなかった?)
(僕もう心配で心配で・・)


((ティータイムしてただなんて・・絶対言えないっ!))








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