おはなし | ナノ







ホグズミード駅に着いた列車を待ってたのはハグリッドという名前の大きな男の人だった。
少し癖のあるしゃべり方をするハグリッドに従い、リディナはドラコたちとボートに乗り込み校舎を目指した。


校舎内に入ると大広間一歩手前の扉の前にいかにも魔女とわかる老年の女性が立っていた。
ドラコに話しかけようとすると、周りの人ごみにのまれドラコとは少し距離が開いていた。
仕方なくその場で待っていると何やらドラコは一人の少年に話しかけていた。
リディナがその少年を見ると、少年もこちらを見たような気がした。
はっとして視線を離すが、彼の緑の瞳が頭から離れなかった。


「一年生、中へお入りなさい」

説明をしていたのはマクゴナガル先生という女性だと分かった。
そういえば、父さまが前に学校の話をしてくれたときその名前を言っていた様な気がするとリディナは記憶を辿った。
父さまはマクゴナガル先生が少し苦手だと言っていたけれど、確かに厳格な感じの人だ。


促された大広間には宙に浮いた何千もの蝋燭が浮かび、天井は魔法がかけられ夜空が広がっていた。
天井から大広間上座の教職員のテーブルに視線を移すと黒尽くめのスネイプと視線が合った。
ほんの数時間くらいしか離れていたなかったのだがリディナはひどく懐かしい気分になり、うれしそうに口角を上げるとスネイプもそれに返した。
しかし、それは親子というリディナだからわかるほんの些細な変化だったため近くにいた教員を含め、その表情の違いに気が付いた者はいなかった。


「あなた方の所属する寮はこの組分け帽子が決めます。
名前を呼ばれたら返事をして、前に出るように」


まず、一番初めにハーマイオニー・グレンジャーと言う名前が呼ばれた。
リディナがあの日、ダイアゴン横丁の洋品店で出会ったあの女の子だった。
ハーマイオニーが椅子に座り、帽子が頭に触れるとすぐに大きな声が広間内に響き渡った。

その声に、グリフィンドールの寮から歓声が上がった。
歓迎を受けるハーマイオニーがとてもうれしそうな顔で席に座る。
続く生徒もレイブンクロー、ハッフルパフそしてスリザリンとそれぞれの寮に分けられ希望を胸に席へと座る。



「ドラコ・マルフォイ」

マクゴナガルにドラコが呼ばれた。
気が付くと、ドラコはまたリディナの近くにいたらしくリディナの肩をたたき、耳もとに近づくと小さな声で

「先にスリザリンで待ってるよ」

素早くそういうと、組分け帽子の待つ椅子に座る。
マクゴナガルが帽子をドラコの頭に乗せるよりも早く、スリザリンという声が広間内に響いた。
スリザリンへ向かうドラコを見ると、どことなく嬉しそうにしており、リディナの視線に気が付いたのか軽く微笑んでいた。

組分けの儀式で最も盛り上がったのは、あの緑の瞳の少年の時だった。
ハリー・ポッター、と彼の名前が呼ばれると、騒がしかった広間内が急に静まりかえった。
みんながハリーの組分けを見守っているようだった。
割れんばかりの歓声をグリフィンドール席から受けるハリーを見ると、リディナはまだ来ない自分の番に不安を感じた。


ハーマイオニーはグリフィンドール。
ドラコはスリザリンと、組分け後の表情を見ればきっと希望がかなったのだろう、どちらも嬉しそうな顔をしている。
今しがた座ったばかりのハリーの表情も、溢れんばかりの笑顔だ。

リディナは教員席に座るスネイプを見た。
組分けを静かに見守るスネイプはなぜか複雑な表情だった。
それを見ると益々リディナは不安になった。




「リディナ・プリンス!」

突然名前を呼ばれリディナは驚いた。
ぐっと手を握り締め、職員席を背に椅子に腰かけた。




「(ほぉ・・・プリンスと言ったが、君はセブルスとルセットの娘か・・)」

帽子が頭に被せられると、すぐに声が聞こえた。

「(・・・え、なんでそれを?)」

リディナが帽子言ったことに驚き、思わず質問をすると帽子はまたリディナに話しかけた。

「(わかるとも、君はセブルスにもルセットにもよく似ている)
(さて・・困ったな、君はどうしたいんだい?)」

「(わたし・・・?)」

「(そう。君にはスリザリンの素質も、グリフィンドールの素質もある)

(父親と同じスリザリンへ行き、有能な魔女にもなれるし)

(母親と同じ、グリフィンドールへ行けば勇敢な魔女になるだろう)」

「(わたし・・・・・・・)」

帽子の言葉にリディナは困惑してしまった。
儀式の直前まで、悩んでいた。
しかし、帽子が決めてくれると思っていたから自分の答えは出さなかった。
だが帽子は決めてはくれない。


「(父さま・・わたし・・・・・・・・)」

その時間がすごく長い時間に感じた。
実際、ハリーの組み分けと同じくらいかそれよりも長い時間だったかもしれない。





「(そうか・・・君はそれでいいんだな?)」

帽子が言った言葉にリディナは首を縦に振った。


「よろしい・・・・グリフィンドール!!!!!!」


ハリーの時と同じかくらいの歓声が再びグリフィンドール席から上がった。
リディナがテーブルまで来ると、ハーマイオニーがやや興奮気味にリディナに話かけてきた。

「やったわね!!また会えてうれしいわ!!!」

ギュっとハグされると少し苦しく感じたがそれもまた少し心地よかった。

「君もグリフィンドールだったんだね」

声の方を振り向くと、いつの間に目の前に来たのかハリー・ポッターがそこにいた。

「マルフォイと一緒だったからてっきりスリザリンかと思ってた」

その言葉に少し心が痛んだ。

「僕はハリー・ポッター」
「私は・・リディナ・プリンス」

歓迎の挨拶が終わり、落ち着いて席に座るとちょうどスリザリン席に座るドラコと目があった。
交わされた視線に少し罪悪感を感じたのは、ドラコの微笑みが寂しそうに見えたからだろうか。
そのあと、教員席に目を移すが、ちょうど他の生徒の頭が邪魔をし、スネイプを見ることは叶わなかった。






ほどなくして組分けの儀式が恙なく終了し、ダンブルドアの挨拶の後に歓迎の宴が始まった。






(父さま・・・私、自分の選んだ道に後悔しないわ)






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