09ずいぶん | ナノ

09 ずいぶん

 あれからずいぶんと月日が経ったように思える。


 ミナキくんはある日、ヒビキくんとスイクンが映った写真を僕に見せてきた。

「良い写真だろう。気高く綺麗な瞳をしている……どちらも」

 悟ってしまったようにその写真を眺めながら、ミナキくんはそう呟いた。
 せめて、もっとあからさまに悔しがってくれればよかったのに。

 絶望しているわけでもなさそうな、それでもあの頃の生き生きした表情ではない気がする。


「ミナキくんは、これからどうするの?」

 こんなことを聞くのは酷かもしれないけれど、聞かずにはいられなかった。
 ミナキくんのこれからを。

「そうだな……もう旅を続けてもあまり意味がないしな。一応ジョウトとカントーは一回りしたし」

「そっか、そんなに回ってたんだね」

 僕とミナキくんは正反対の生活だった。僕はひたすらこのエンジュで修行を続けてきたのに対して、ミナキくんはあちこちの町を旅してきた。
 ミナキくんは旅の終わりを迎えた。

 僕は――どうなるんだろう。

「これからはマツバを追いかけるか」

「えっ?」

「冗談だ、マツバ」

 何だ、と肩をすくめる。
 でもミナキくんは真剣な瞳で僕を見つめていた。

「今のは冗談だが……実際こうしてマツバと過ごす時間は、スイクンを追っているときのようにワクワクするわけではないが、何と言うか、落ち着くんだ。だからこれからは、もっとマツバとの時間を増やしたいと思うんだが……駄目か?」

「ミナキくん……」



「マ、マツバ? …………泣いているのか?」

「泣いてないよっ!」


 ただ、嬉しかっただけ。





ずいぶん
(道の先はまだ視えないけれど)

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