時をかけるN
□ タイムスリップ 1/11
一瞬のことだが、経験したことのない感覚が襲った。
足が地面から離れる。反射的に目を閉じてしまったので視界が見えずにぐるぐると回る。脳や心臓までもぐるぐると回っているようで、吐き気がしそうになったとき、足が再び地に着いた。
ぐるぐるした身体が元に戻ったのを感じ、そっと瞼を開いた。
「ここは……?」
さっきまで居たところとは明確に違っていた。
どこかの道路のようだが、見渡す限り待ち伏せているトレーナーは居ないようだ。
ところが道の真ん中に、異様な雰囲気を醸し出している男が立っていた。
本来ならばこの場所について尋ねに行きたいところだが、Nは男の雰囲気に呑まれてその一歩を踏み出せなかった。
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