時をかけるN
□ 別れ際の微笑 1/7
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黒い陰が身を潜めて固まっている様子は、どことなく滑稽だった。
「とりあえず現状ではこれだけしか集まらないわ」
動揺をあらわにしているしたっぱたちを一瞥し、アテナが告げた。
「大分減ってますね」
泥土で汚れた服を手で払いながら、ランスがいつもと変わらぬ様子で言った。
「大方逃げ出したんじゃねーの、どうせ」
ラムダが投げやりな態度を見せる。部下達がどんな判断をしようが勝手だとでも言うように。
「残ってる奴らも、今にも逃げ出しそうな顔してるけどな」
「仕方ないことだわ……ずっと温めてきた計画だもの。それがこんな……」
「計画は大失敗。損害は過大。アジト喪失。団員も士気もドン底」
口籠もるアテナと裏腹に、ランスが淡々と残酷な事実を述べた。
その言葉がしたっぱたちに聞こえたかは分からないが、したっぱたちは不安の色を隠そうともせず互いに耳打ちしている。
「……四面楚歌、ですね。いや、絶体絶命とでも言いましょうか。アポロさん?」
ランスが彼の背中に、答えを求めるように言葉を投げかけた。
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