時をかけるN
□ 彼女の面影 1/7
「おはよう。よく眠れたかな?」
「おはようございます……」
最低限の身支度を済ませ、昨晩夕食を食べた場所へ向かうと、マツバが既に座っていた。
そして既に用意されていた朝食を食べた。
慣れない生活に気恥ずかしさが拭えないNにとって、マツバが何気ない話をちょくちょく振ってくれるのは有り難かった。
「それでね、ぼんぐりにはいろいろな使い道があるんだ」
「へぇ……」
「マツバさま」
食後も、ほとんどマツバが話し手である他愛ない話を続けていると、屋敷の使用人のような女性がマツバを呼んだ。
「御約束の方が参られました」
「分かった。今行くよ」
マツバはそう返事するや否や立ち上がり、Nにも目線で促した。
Nは少し気分を正し、歩きだしたマツバの後ろについた。
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