時をかけるN | ナノ

時をかけるN


□ エンジュシティ 1/10

 エンジュシティまでの距離は大したことないらしく、お互いのことを話しながらその道を歩いた。


「自己紹介がまだだったね。僕はマツバ。さっきも言ったように、エンジュシティのジムリーダーをしているよ」

「ボクの名前はNです」

 他に紹介する気はなかった。
 自分の過去の称号を、ここで口にしたくなかったから。


「不思議な名前だね。じゃあ改めてよろしく、Nくん」

「……よろしく、マツバ……さん」


 よろしくだなんて、使い慣れない言葉だった。使い心地は、悪くない。




 途中でポケギアを買って、コガネを出た。

 道を歩けばやはりトレーナーが至るところに立っているが、目が合っても勝負は挑んでこなかった。
 代わりに、「マツバさん、こんにちは!」という声が聞こえたりはしたけれど。そしてマツバは「こんにちは」と笑顔で返していた。

 疑ってはいなかったが、本当にジムリーダーなんだと感じる。それも、人々に慕われている、優しさと強さをあわせ持った。

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