時をかけるN
□ 最優先事項 6/10
「マツバ……一体どういうことだ! ――――なーんてな!」
らしくない声色でそう言って、おどけたポーズをしてみせる。
「こっちだって二度も同じヘマ踏みにこねーよ」
喉の奥から鳴らすような笑い声を零しながら目元を擦ると、本来そこにあるはずのない泣きボクロが現れた。
「俺様なりのちょっとしたサプライズだ。多目に見てくれよ」
「あはは、変な人だ。ちなみにミナキくんはそんなに老けてないよ」
「……おいおい、綺麗な顔して言うじゃねぇか。オッサン傷付いたぞ」
「謝らないよ。だって君達のほうがあの子を傷付けてるかもしれないからね」
ミナキに変装していたラムダは、マツバの切り返しに舌を巻いた。
「ところで君は親切にも自分たちのアジトを案内しに来てくれたのかな?」
続けてマツバが皮肉るように問いかけた。顔に貼りつけたような笑顔は最早嘲笑とも受け取れるほどだ。
「ハッ、臨戦態勢でよく言うぜ」
マツバのゲンガーは先程からずっとラムダのほうを睨んでいた。ラムダは渇いた笑いを溢し、自身もボールを投げポケモンをくりだした。
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