時をかけるN
□ 最優先事項 4/10
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「トージョウの……滝……?」
コトネがマツバの言葉を復唱する。
「それって確か、ワカバタウンの海の向こうにあるっていう――?」
ヒビキが記憶の糸を手繰り寄せるように呟いたのを、コトネが耳で拾う。
「うそっ! そんな近所にあるの!」
「前にお母さんが言ってた。あとウツギ博士からもチラッと聞いたかな。まずはジョウトのバッジを集めてからだねって言われたけど」
「早く行こうよ! あっ、その前にポケセン行かなきゃ。フルメンバー連れていくんだから!」
コトネが慌ただしく口を動かし、バッグを探る。
「うーん、キズぐすりもちょっと足りないかも。でも急がなきゃNが……」
「ボクもポケモンの回復をさせておきたいな。マツバさ――」
ヒビキがマツバのいたほうへ顔を向けた。
「あれ? ……マツバさん?」
つい今まで隣に居たはずのマツバが、忽然と姿を消していた。
喋ることに夢中になり、マツバが途中で生い茂る木々の中へ入っていったことに誰も気付かなかったのだ。
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