時をかけるN
□ 最優先事項 3/10
「大丈夫ですよ。したっぱならともかく、優秀な幹部ならば自分の尻くらい自分で拭えるものでしょう、ラムダ?」
アポロは爽やかな笑みをラムダに向けた。爽やかながらも、えもいわれぬ圧力を感じる笑みを。
「……分かったっつーの! 行けばいいんだろ! お前のその笑顔、不気味なんだよ」
「不気味とは失礼ですね。貴方を信頼しているという眼差しを向けただけです」
ラムダが参ったように頭を掻き、「残業代が欲しいくらいだぜ」とぼやきながら来た道を戻っていった。
「大丈夫かしらね、アレ……」
アテナが猫背の後ろ姿を見送りながら、言葉の割には大して心配していなさそうな口ぶりで呟いた。
「大丈夫でしょう。ラムダを信頼しているということは嘘ではありませんから。勿論あなたがたもですよ、ランス」
「わっ、私は別に……!」
「ランスったら、照れちゃって」
からかうように笑うアテナと、反対に不機嫌そうに口を尖らせるランスを眺めながら、アポロは囁くように語った。
「今は、チョウジで実験した怪電波を使ってある程度セレビィをコントロールすることができていますが、それもまだまだ不完全です。今の状態ではエンジュの宝物殿から羽一枚盗むのが精一杯のようですしね」
アポロが浮かべた笑みは先ほどとは違い、クリスマスの夜にサンタが来るのを待ち侘びる子供のように無邪気なそれだった。
「もっと長期間の時空移動ができるよう――セレビィを完全に支配すれば……過去のサカキさまの元へだって行き、ロケット団をさらに強大なものにすることもできるのですから」
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