時をかけるN
□ 最優先事項 2/10
「ああ、アテナ。資料は持ってきてくれましたか?」
アポロの目がアテナへ向く。
アテナは得意気に頷き、その腕に抱えていた数枚の書類を手渡した。
「ラムダによると、緑髪の子と一緒に居たのはあの子ども二人とエンジュのジムリーダーよ。正直誰がセレビィを持っていてもおかしくないわ」
アテナは書類にまとめたことを自分の考察も含め報告する。
アポロは相槌を打ちながら続きを促す。
「まぁ持ち主を特定するのは難しいってことなんだけど、それより緊迫した問題があるの」
軽い前置きをすると、アテナは隣に居るラムダを一瞥する。
・
「ラムダの影にゲンガーがつけられてたのよ。気付いたのはついさっき。しかもラムダのせいで逃げられちゃったけど」
「なっ! 俺のせいじゃねぇよ! アイツがすばしっこく動きやがって――」
「はいはい分かったわよ。でね、そのゲンガーはおそらくエンジュのジムリーダー、マツバのものよ。彼は千里眼を持つ修験者……もうここの居場所はバレてるかもしれないわ」
「さすがジョウトでも名立たる古都、エンジュのジムリーダーとも言うべきですかね……」
「そんな悠長なこと言ってていいの?」
アテナが指示を促すかのように、アポロへの語勢を強めた。
- 77 -
[prev|next]