時をかけるN
□ 最優先事項 1/10
「アポロさん!」
自分の名を呼ばれたので振り返ってみれば、ランスがこちらへ歩いてきた。
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「奴、意外と口が固くて……いい情報は聞き出せませんでした。ちょっと目を離した隙に何かゴソゴソと怪しい行動を起こしていたので、手は縄で縛っておきましたが」
「なるほど……。まぁ彼が何をしたところで、ここがどこであるかも分かっていないようでは手も足もでないでしょう」
二人分の足音が、窓のない廊下に響く。両者とも、その表情からは余裕が滲み出ている。
「さすがラムダさんですよね。誘拐とか得意そうな顔してますし――」
「誰が誘拐犯顔だ」
「い、いつからそこに居たんですか」
軽い冗談を口にすると、第三者の声がしたと共に肩を叩かれ、ランスは動揺をあらわにした。
「俺様の気配を読めると思うなよ」
「忍者じゃないんだから、全く……」
振り返った先には、ラムダとアテナが揃って立っていた。
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