時をかけるN
□ 接触 10/10
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「どっ、どうしよう! 連れていかれちゃったよ!」
「一体どこに……!」
Nが煙と共に消え去った直後。
パニックに陥るコトネとヒビキをよそに、マツバは動揺を一切見せず、静かに立っていた。
「マツバさん、何でそんなに冷静なんですか!?」
ヒビキがマツバに迫ると、マツバは得意気に説明を始めた。
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「煙が撒かれる直前に、奴の影にゲンガーをつけた。たとえ目に見えなくとも、ゲンガーは奴の足下に潜んでいるんだ」
そこまで言って、マツバはスッと瞳を閉じた。
「そして僕は、ゲンガーの居る場所を“視る”ことができる……!」
目を瞑り沈黙するマツバに、自然と二人も沈黙を守っていた。
木々の葉同士が風によって擦れ合い奏でる音が幾度か耳に入った頃、マツバは瞼を開いた。
「……Nくんの居場所が分かった」
「ど、どこですかっ?」
「ジョウトとカントーの狭間――トージョウの滝だ」
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