時をかけるN
□ 接触 8/10
「突然連れてこられたから、分からない」
その問いかけに朴直に答える。
『何か手がかりになることは無いのかよ』
「うーん……部屋は薄暗くて肌寒いくらい。あと、連れてこられる途中でポケモンの鳴き声がした。知らないポケモンだと思うけど……コウモリみたいな」
『コウモリ? ……ズバットか?』
「分からない。あと――あっ! ちょっと待って……」
シルバーの返事を制止して、Nは瞬時に耳をそばたてた。
「聞こえる……滝の音だ。近くに滝が――」
最後まで言い切る前に、Nの耳は別の音を拾った。
足音。
誰かがこちらへ向かっている足音。
「――ごめんっ。切るね」
『え、な――』
返事を聞く猶予などない。
すぐに電話を切り、ポケットに滑り込ませる。
ポケギアがポケットに収まったか否や、部屋の扉がゆっくりと開いた。
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