時をかけるN
□ 接触 6/10
そんな思いは、させたくない。
まずはセレビィを助け出さなくてはならない。
そのときNの中で、さらに確固な決意が生まれた。
「でも、どうしようか……」
まだ血の流れる傷口を押さえながら、自分の置かれている状況を整理する。
自分は檻の中。
ゾロアはすずねのこみちに置いてきてしまったし、レシラムに関しては五年後の世界にいるだろう。
この部屋には同じような檻が隣合って存在しているが、それ以外は何も――窓すらない。
ここがどこなのか、Nも知ることができなければ、マツバたちもそうだろう。
せめてこちらが得た情報を外に伝えることができれば――――
「……! ポケギア!」
ポケットから新品のポケギアを取り出し、電源を入れる。
薄暗い部屋に慣れた瞳孔が、明るい液晶画面によって縮こまる。
Nはマツバたちと電話番号の交換を済ませていなかった。
それでもNは、迷わず頭の中に入っている番号を押していった。
無機質な呼び出し音が、耳元で響く。
『もしもし』
そして電話は、繋がった。
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