時をかけるN
□ 接触 4/10
嘘を気取られないように、アポロを鋭く見据える。
幾何かの時間、Nとアポロは互いに探るように視線をぶつけ合う。
「……誰かを庇っていますね」
「――!!」
視線の戦いの勝者はアポロだった。
全て見透かしたようなアポロの呟きに、Nは思わず息を呑んだ。
「もしくはセレビィのボールは他の者が所持している、とかですかね? その場に居た方々ですか?」
「…………」
「真の持ち主は、誰ですか?」
「…………」
Nは唇を真一文字に結んだままにしていた。
「なるほど、教える気はないと……」
そう呟くと同時に、アポロはラムダへ目で合図を送った。
「所詮無駄な抵抗だとは思いますが……まぁいいでしょう」
タイミング良く、部屋の外から扉をノックする音が聞こえた。
「ラムダさん? ランスですけど」
「おう。入っていいぜ」
ドアの開く音がした。
Nは首をなるべく動かさないようにして、視界の端でその新たな登場人物の姿を捕らえた。
「――言わないのなら、言わせるまでです。そうですね、ランス?」
ランスと呼ばれた男は、その言葉だけで全てを察したのか
「ええ、そうですね」
と、感情を感じさせない声で返した。
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