時をかけるN
□ タイムスリップ 2/11
「一番だって……世界で一番強いって言ってたじゃないか!」
男の背に、あどけない少年の声が浴びせられる。
男を横から眺めていたNからは、子供の姿が視界に入っていなかったのだ。
「やめちゃうのかよ!? どうすんだよこれから!?」
Nは少し首を伸ばして、悲痛な叫びを男に向ける子供の姿を確認してみた。
まだ年端もいかないような小さな赤い髪の少年が、泣きじゃくりながら男の数メートル後ろに立っていた。
「負けを認めなければ先には進めない……。私はより強い組織を作るため今は一人になる」
「強いってなんだよ! 大勢で集まったって、結局子供一人に負けたじゃないかよ!!」
事情は分からないが、少年の真っ直ぐな言葉が胸にちくりと刺さった。
結局子供一人に負けた…………そうだ。プラズマ団も、――ゲーチスも、結局はそうなんだ。
本当に強かったのはプラズマ団でもゲーチスでも自分でもない――もう一人の、本当の、英雄。
だったら、ボクは何だろう?
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