時をかけるN
□ 接触 2/10
Nは下唇を噛み、目の前の明らかな敵に向かって身構える。
ロケット団――ヒビキが叫んだ言葉が頭を過る。
彼らのの胸にある赤いロゴを睨む。こいつらが、セレビィを盗ったのだと。
「見たことのないポケモンを連れていたというから他方の者かと思いましたが……どうやら私たちのことは知っているようですね」
アポロの言うことなど、Nはさして気にしなかった。
どういう風に思われようが関係ない。ただ、わざわざここまで連れてこられたのだから、自分が目的を果たさなくてはいけないだろう。
「――セレビィはここにいるのか?」
なるべく冷静な心を保ち、発言する。ポケモンが居ないこの状況では、抗う術もない。
「いると言ったらどうするよ?」
アポロが答える前に、ラムダが茶化すように口を挟んだ。
「……返してほしい」
アポロがその言葉に反応し、口元を歪ませた。
「返してほしい? これをですか?」
次の瞬間アポロがNの視界に突き付けたのは、小さな檻に入りボロボロになったセレビィの姿だった。
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