時をかけるN
□ 宣戦布告 11/11
「ホウオウは選ばれた者の前にしか現れない!」
ラムダの表情が一瞬硬直した。
マツバの刺すような視線によって。
隣に居るNも、その威圧に圧倒されるほど。
温厚な雰囲気の彼をここまで変貌させるポケモンが、ここには居るのだろう。
・・
「……そうみたいだな。これをわざわざ取りに行ったのに、無駄足だったぜ」
「!? そ、それは!」
ラムダが懐から何かを取り出した。
虹色に光る、一枚の羽。
「どうしてそれを――!」
信じられないものを見ているかのような驚きかたに、Nも目を見張る。
「それは企業秘密だな。まぁもう要らねーから、返してやってもいいぜ」
ラムダが虹色の羽をマツバに差し出した。
混乱したマツバは、その羽が本物かどうか見極めようと凝視する。
だから気付かなかったんだ。
羽を持っていないほうの手の動きに。
「ただし、コイツと交換だ!」
Nの腕が掴まれ、強い力で引き寄せられる。
「マタドガス、煙幕!!」
同時に、Nの視界が灰色に染まった。
本能が警鐘を鳴らすが、その突然の力に抗う術はなかった。
「Nくん!!」
灰色の中から呼ぶ声が聞こえたが、Nは応えられなかった。
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