時をかけるN
□ 別れ際の微笑 5/7
「何、ラジオ塔で迷子になっていたので拾ってあげただけですよ」
「そんな、その辺をうろついてるわけないでしょ?」
アテナが間髪入れず反論した。
「それはそうでしょうね。私がこれを見つけた直後、セレビィの名を叫んでいる青年を見かけました」
「まさか――」
「いえ。例の子どもではありませんでした。見たこともない、緑色の髪の青年でした」
「あっ!!」
アポロの言葉に異常な反応を示した団員が居た。
彼は漏らした驚愕の声を隠すように、慌てて口元に手を当てるが既に遅い。
「どうしたんですか?」
声をあげたのが自分直属の部下だと判ったランスが、冷たい眼差しを向ける。
睨まれた団員は、思わず顔を引きつらせる。
そして目線を泳がせ、口を開こうかどうか迷っているそぶりを見せた。
「言いたいことがあるなら早く言いなさい。時間の無駄です」
ランスに追い打ちをかけられ、ついに団員は口を開いた。
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