時をかけるN
□ 別れ際の微笑 4/7
辺りの空気が鮮烈に一変した。
そこで時の流れが停止したかのように。
刹那、誰も言葉を発することができなかった。
目の前のセレビィというポケモンを視覚で認識し、脳に伝わるまで随分長い時間がかかったようだった。
「ア、アポロ……それ……」
それでも幾何も無く、アテナが無言の空間に音を送った。
そこで初めて、一同は驚きを示し始めた。
「えっ、うそ! ほっ本物!?」
「テレビで見たことあるよ……」
「嘘だろ?」
「な、なんで?」
動転する声があちこちに飛び交う。
「おい、冗談……つまんねーぞ」
さすがのラムダも頬がひきつる。リアクションが取れずに、言葉が喉に詰まったような言い方だ。
「一体どうして……」
冷静なランスも目を見開いて、穴が開くほどにセレビィを凝視している。
アポロは皆の反応に、とりあえず満足したように微笑んだ。
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