時をかけるN
□ 彼女の面影 7/7
Nの自虐的ともいえる一言に、コトネとヒビキはきょとんとした。
「よく分かんないけど、それはないと思うよー?」
「どうしてだい?」
コトネの返しに、Nはさらに質問で返す。
「だって、そのポケモンすっごくあなたに懐いてるもん!」
コトネはゾロアを指差して、満面の笑みを浮かべた。
「ていうかまず、ポケモンに嫌われるようなことする悪い人をマツバさんが招き入れるわけないけどね」
ヒビキも付け足すように言う。そこにはNへのフォローと同時に、マツバへの確固な信頼も感じられた。
「あはは、でも人の心の内までを完璧に知る術はないからね」
――それでも君を信じている。
まるでそう言われたように、三人の優しい言の葉はNの胸中まで届いた。
「ありがとう。キミたちは優しいんだね」
だからだろうか、言い慣れない台詞がすっと口を衝いて出た。
「えへへ、何か照れるねっ」
コトネが嬉しそうにヒビキに言うと、ヒビキは笑顔で頷いた。
そして少し真剣な表情になり、自分よりいくらか身長の高いNを見上げた。
「あなたを信じて、お願いがあります。ぼくたちと一緒にセレビィを探してくれませんか」
真っ直ぐな瞳。
彼女と同じ、強さと優しさを秘めた心。
「こちらこそ、一緒にセレビィを探してくれるかい」
そう言ったNの顔には、自分でも気付かない内に自然な笑みが浮かんでいた。
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