時をかけるN
□ エンジュシティ 9/10
「当たりだよ」
マツバは短く伝えた。
それでもNには意味が分かった。
「セレビィの持ち主が分かったよ」
マツバはNを安心させるように、にっこり微笑んでみせた。
「ヒビキくんっていう、男の子だ。子供だけど腕が立つよ。それに、何か光るものをもってると思う。セレビィをもっているのも納得かな」
その少年には一目置いているような雰囲気が、マツバの口振りから感じられる。
一町のジムリーダーである彼がそう言うのならば、それほどなのだろう。
実際会ってみて自分がどう思うかは分からないが。
「ヒビキくんは今コガネに居るみたいだけど、もう夕刻だし明日の朝にこっちまで来てもらうことになったよ」
Nの思考を読んだかのようにマツバは言った。
「こっちに?」
「うん。やっぱりセレビィ自身のことをよく知っている人が居たほうがいいだろうし。彼は幾度もロケット団に勝ち放しているしね」
これは進展なのだろうか。
分からないまま、Nはマツバに促されて部屋を出た。
もう空には月が浮かんでいた。
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