時をかけるN
□ エンジュシティ 7/10
Nはハッとして顔を上げた。
「どうしたの?」
「セレビィと一緒に消えたとき……少年の声が聞こえた」
――『セレビィー?』
異空間に吸い込まれる寸前に聞こえた。
声変わりもしていないような年端もいかない男の子の声。
それが有力な手がかりかもしれない。
「セレビィはその少年のものだということかな?」
「いや、根拠はない……」
「だとしたら僕に一つアテがあるかもしれないんだけど」
「えっ、アテ――?」
「こっちも根拠はないけどね」
マツバは一つ断りを入れつつ、推測を述べた。
「セレビィなんて普通じゃ出会えない。そんなポケモンに選ばれるような少年を――僕は知ってる」
「選ば……れる……」
ポケモンに選ばれる少年。
それならばNにも心当たりはあった。無論ジョウトに居るはずはないが、脳裏に真の英雄がチラリと浮かんだ。
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