時をかけるN
□ 新たな出会い 8/9
「僕はこの先にあるエンジュシティという町に住んでいるんだけど、僕の家にはジョウトの伝統や伝説に関する書物が結構あるんだ。君の言う、セレビィのことも調べられる」
セレビィ、という単語にNが反応する。
「彼のことを知っているの……?」
自分の不注意で見失ってしまったポケモン。できることなら、彼も一緒に元の場所へ戻してあげたい。
「あまり詳しくはないけどね。一応、ジムリーダーをやっているから知識はあるよ」
「ジムリーダー……」
Nの脳裏に、今まで戦ったイッシュのジムリーダーたちが浮かんですぐに消えた。
強さを示すためのバッジたちは、もうここにはない。イッシュで使っていたものはほとんど置いてきたのだ。
これからの“自分”をつくるために。
「変に気構えなくていいよ。さっきの君の話だと、宿も無いみたいだから、どうかな?」
青年は言い様のない雰囲気を纏っていたが、先程の女の子にもNにも変わらぬ笑顔を見せる彼は悪人には見えなかった。
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