時をかけるN
□ 新たな出会い 7/9
「行ってしまったけれど……?」
Nは遠慮がちに尋ねた。
自分と話している場合じゃないのではないかと訝りながら。
その反面、返ってきた答えは予想てきなかったものだった。
「大丈夫だよ。ここ周辺には危険な様子はないみたいだから」
まるで全てを知っているような口振りが、Nに小さく印象を与えた。
結局よく分からないまま、Nは納得したフリをした。
そして青年をじっと見つめると、彼の目がチラチラとNを見ている。黒い、それでいて紫がかった不思議な瞳を動かして。
やがてそれはNを映したまま静止した。
「いきなりこういうこと言うのも変かもしれないんだけど……」
前置きのような言葉を発して、
「良かったら僕の家に来ない?」
Nの思考を一時停止させるような提案をしたのだ。
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