時をかけるN
□ 新たな出会い 3/9
「めっちゃかわええ!!」
「え?」
彼女の目線は、目の前のNではなく、Nの腕の中にいるゾロアに注がれていたのだ。
まさに目がハートとはこういうことかと思う程に、目を輝かせている。
「なぁ、その子触ってええ?」
手を控えめにゾロアの頭に向けて出しながら、彼女は興奮した様子でNに聞いた。
初対面の人間に大切なトモダチを触らせるのは、今までなら遠慮されたことだった。でも彼女は悪い人では無さそうだし、ゾロアを好いて言っているようだ。
「……う、うん。少しだけなら」
何故か少し緊張しながらそう答え、ゾロアを少しだけ彼女の前に近付けた。
「おおきにな! キャーめっちゃふわふわやー!」
彼女はそっと手の平をゾロアの頭に乗せると、撫で始めた。
ゾロアは特別嫌がってはいないが、初めての経験に驚いて固まっている。
ゾロアは、N以外のヒトに触れられたことがない。
自分と一緒に狭い世界を生きてきたトモダチにも、一緒に色んなものを見ていきたい。
彼女の嬉しそうな笑顔を見て、Nはそんなことを思った。
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