時をかけるN | ナノ

時をかけるN


□ 隠したカード 7/7

 少年がここまで来るのに使ったエレベーターが、人を乗せて再びここまで上がってきた。



「ヒビキくんっ!!」


 エレベーターが開くと同時に、幼なじみの叫び声が聞こえた。と思えばあっという間に少年の目の前まで走ってきた。


「コ、コトネちゃん!?」

「大丈夫ヒビキくん!? ケガは? 何とも無い? ロケット団は?」

 ヒビキの両腕を掴んでまくし立てるコトネに、ヒビキはたじたじになる。


「ヒビキくんが困ってるよ」

 コトネに続き、ゆっくりとした物腰でエレベーターから出てきたのは、チャンピオンのワタルだった。

「あ、どうも……」

 ワタルもロケット団を殲滅せんとしていたので、来るだろうと予測していたヒビキは軽く会釈した。


「ロケット団幹部は?」

「そう! どうなったの!?」

 一気に騒がしくなったと感じつつ、ヒビキは有りのままを説明することにした。


「……幹部と、バトルしました。何とか勝ったけど、まだ何か策があるみたいで、そこの非常口から仲間と逃げていってしまって」


「策……? 馬鹿な……このラジオ塔の占領に首領であるサカキへの呼びかけ……それが奴らの最後の作戦のはずだ。ヒビキくんに負けた以上、奴らは解散にまで追い込まれたはず……何故」


 何故ロケット団は解散しなかったのか。


 平和になった街の情景に囲まれた展望台で、 ヒビキ達の中にだけ暗雲が立ち込めた。

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