時をかけるN
□ 変わらないもの 9/10
「ロケット団のボス!? あの、アポロってヤツが言ってた……」
ヒビキとコトネが声量を抑えながらも驚きをあらわにする。
「……」
シルバーはそれ以上の情報を語ろうとはしなかった。
タイムスリップで幼いシルバーの叫びを聞いたNはシルバーの複雑な心情をそれとなく察し、ドアの内側での会話に脳を集中させた。
「私をロケット団に入れていただきたいのです」
「…………どういう意味だ?」
「言葉通りです」
「ハッ、家族を奪われた復讐でもする気か?」
「復讐なんてとんでもない……むしろ感謝しています。私はただ純粋に、貴方へ忠誠を誓いたいのです」
復讐――?
中からは、何やら物騒な会話が聞こえる。
「あいつの親は、ロケット団にポケモンと金を盗られたのがきっかけで、一家離散になったって……」
険しい表情でシルバーが話す、悪者の事情。
こんな状況にでもならない限り、知る由もなかっただろう。
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