時をかけるN
□ 変わらないもの 8/10
「部下には何をされてもダンマリだったそうじゃないか。おまえみたいなエリート様が、何の目的でこんなところまで来たんだ?」
部屋の中から聞こえる、ドスの利いた男の声。
Nはドア越しにその声を聞いた瞬間、自らの記憶を辿った。
どこかで聞いたことがあった。それも最近。
貫禄を感じさせるこの雰囲気……。
「オヤジ――ッ!」
思索していたNのすぐ隣から、噛み潰したような声が耳に入った。
同時にNの記憶の扉が開いた。
『私は部下達の力を活かしきれなかった……! 私はいつの日か必ずロケット団を復活させる!』
『………………お前にも分かるときが来る』
他の三人には言っていない、Nが初めて時を渡ったときのこと。
幼いシルバーに背を向けて去って行った、黒い服の男。
シルバーの、父親。
「シルバー……」
Nは遠慮がちにシルバーをちらりと見た。
シルバーはそんなNのほうを一瞥し、ドアの先を睨んだ。
「あいつは――ロケット団のボスだ」
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