時をかけるN
□ 変わらないもの 5/10
「ボク自身もまだ明確な解を得てはいないが、もう一つの考えかただけで世界を見たくないんだ……。争った人間のどちらかだけが正しいのではないと。いろいろな考えが混ざり合って調和してこそ、より素晴らしい世界が再構築されるのだと、ボクは思いたい」
「N……?」
Nの言葉に真剣に耳を傾ける三人が居た。
シルバーは目を床に向けてはいるが。
「ちょっと話しすぎてしまったね。ボクらもここを出ようか」
それ以上言うことが無くなって――というよりN自身もどう答えを出せば良いのか分からなくなって話題を打ち切ると、開きっ放しのドアへ足を踏み出した。
「ビィ……」
そのNの目の前にセレビィが姿を見せてきた。
電波から逃れはしたものの、汚れた羽根などからは檻の中で暴れた痕跡があり少し痛々しい。
自分自身もかなり痛々しい恰好であることは忘れ、Nは悲しそうにセレビィを撫でてやった。
「……苦しかったね」
「ビィ! ビィ!」
Nの言葉にセレビィは何故か首を振った。
撫でられるのを嫌がっているわけではなさそうだ。
「セレビィ?」
Nがセレビィの声を聞き取ろうと集中させたそのとき、セレビィはタイミングを掴んだとばかりに光り出した。
「ビィ!」
Nはこの感覚を知っていた。
この光の色。
そして突然宙に浮かぶようで。
次の瞬間には、何も分からなくなる――。
人生で三度目のタイムスリップに、Nはもう身を委ねていた。
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