時をかけるN
□ 集結と終結 9/11
さきほどまでの余裕が跡形もなく崩れ去った。
アポロはただ、マツバの次に出る言葉を待つしかなかった。
「セレビィを操る電波を流してる場所は、しっかりと視えたよ。気持ちが高ぶりすぎて冷静さを欠いたのが君のミスだ。爪が甘かったね」
「じゃあアカネさんが電波を止めて……?」
コトネの言葉に、マツバはこくりと頷いた。
「ここに来る前に電話したら、快く引き受けてくれたよ。僕等ジムリーダーもロケット団には町を荒らされて迷惑していたからね」
「馬鹿な…………!」
喉の奥から絞り出したような声が、アポロの口から吐き出された。
「なぜ!! なぜ私たちの理想は幾度も阻まれなければならないのですか……! ここまでやってきたことが、また全て水の泡ですよ……ははは……」
最高潮の気分から叩き落されたのだ。
アポロの目には悲しみや諦め、さまざまな思いが混ざり合っていた。
立っている気力もないというようにデスクに手をつく。
「せっかく、今度こそうまくいくと……サカキさまに会えると……思ったのに、所詮はただの悪あがきだったということですか…………」
「悪あがき……じゃない」
別の声が部屋に響いた。
自分でもなぜ口に出したのか分からなかった。
しかしNは、言わなきゃいけない気がした。
言いたかった。
- 120 -
[prev|next]