時をかけるN
□ determination 10/10
「マツバさん!!」
その場に居た全員が、ヒビキの目線の先を追った。
「やぁ。やっと視えるようになったよ」
「ちょっと待ってくれ。私も居るぞ」
マツバの隣で身を乗り出して自己アピールするミナキ。
「あ、ミナキさんも」
「……マツバに比べて、反応薄くないか?」
「そんなことよりマツバさん、大丈夫なんですか?」
マツバは柔和な笑みを向け、手で少し目を広げてみせた。
「特に異常はなかったよ。これでも僕、修行してるしね」
「お前はさっきの……」
ラムダがマツバを指差してそう言うと、マツバの目から笑みが消えた。
「そうそう。僕、あなたにお返ししに来たんだ。今度は最後までしようよ」
「私はセレビィよりスイクンのほうが好きだが、同じ伝説ポケモンが傷つけられるのを黙って見ているわけにもいくまい! というかスイクンもそんな目に遭うかもしれないと思ったら私はいてもたってもいられなくなり日課のスイクン情報収集にも身が入らないほどでスイクンは」
「だからここは僕等に任せてよ。セレビィの居る部屋はこのアジトの最下層だ」
さも当たり前のようにミナキの言葉を遮り、マツバが一歩前へ出た。
「Nくんは必ず助ける。このアジトの構造は大体視えるから、すぐに三人で行けるから」
「マツバさん……」
「人の欲望で運命を変えることなんて許されない! 君たちの手で止めるんだ」
静かに叫ぶ、といった表現が一番しっくりくるかもしれない。
マツバの言葉には、彼自身の強い思いが込められているように感じた。
未来の“視える”彼が、感じた気持ちが。
その思いをしっかり受け止めるように、ヒビキは頷いた。
「――はい!」
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