時をかけるN
□ determination 9/10
「……渡せ!」
ヒビキが吠える。
そう簡単に渡してくれる相手ではないとは分かっていたが。
「そうですねぇ、私たち二人に勝ったら渡してあげても良いですよ?」
ランスはとびっきりに歪んだ笑みを向けた。
面白くて仕方ないという様に。
その横でラムダは終始ニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべている。
「分かっていますよ? まぁまぐれであっても私たちは一度負けた身です。しかし、アポロさんの時間稼ぎくらいにはなるでしょう?」
「っ!」
ヒビキは気付いた。
さきほどから部屋を照らしているゴルバットは、状態異常の技を多く使えるポケモンだ。その上ラムダはドガースの使い手。毒タイプは主に相手をじわじわ弱らせていく長期戦の戦法が多い。
ここで二人を足止めするつもりなのだ。
「くっ……仕方ない。コトネ、戦える?」
「一応、ベストメンバー連れてきたし大丈夫だと思う」
背に腹はかえられない。
仮に勝負を断ったところで、素直に部屋から出してくれるとは限らない。
――戦うしかない。
勝負を受けてたとうとヒビキが前を見据えたとき、ランスとラムダの後方に見知った影が見えた。
あれは――!
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